文化・芸術

鎌倉文学館・源氏物語

先日、江ノ電由比ヶ浜駅から行く、鎌倉文学館へ行きました。
現在開催中の特別展、「スーパーストーリー源氏物語」(4/25~7/5)
を、見に行ったのです。

『記憶の中の源氏物語』(新潮社)著者の、三田村雅子氏監修による展示で、
この書の内容にそって、
時代を追って、人々の「源氏物語」受容のあり方を見せています。
私が一番好きだった研究書です。

展示の中の現代コーナーに、
与謝野晶子以降の現代語訳本の展示として、
『紫の結び』を加えていただきました。
そのご挨拶をかねて、担当編集と行ってきたのでした。

鎌倉文学館を訪れたのは初めてでした。
旧前田侯爵家別邸の建物と立地、すばらしかったです。
2階のテラスから、
木々と町並みの向こうに水平線ものぞめる古い洋館。
丘を下ったところに、有名なバラ園があり、
まだまだ花が咲いていました。

残りの時間で、
鶴岡八幡宮と鎌倉宮の中間あたりにある、
源頼朝のお墓にお参りしてきました。
駅前と小町通りのあたりは、修学旅行生やら遠足生徒やら年配者団体で、
平日だろうと混雑している鎌倉ですが、
お墓周辺の道には観光客が見当たらず、
私と女性編集者の二人きりで、
うっそうと茂る木々の下にぽつねんとある墓に参りました。
こうまで静かとは。
鎌倉宮の土牢を見たのもこの二人きりで、
どちらも少しびびりました。




ウサギ・ネズミ・カエル

先日、朝日新聞大阪本社の記者さんから、電話取材があり、

「古事記」について、夕刊の文化欄に連載をしていて、

オオクニヌシについて話を聞きたいと言われました。

私が、ずいぶん前にアエラムック「日本神話がわかる」で、オオクニヌシを担当していたせいだそうです。


5/9に記事が載って、掲載紙を昨日、もらいました。

出雲大社のしめ縄や稲佐の浜の写真付きで、出雲神話の紹介をしてあります。

(もってきてくれた「本とも」編集氏が、大阪の文化度高いですね~と、感心していました。)


私が、出雲神話が一番面白いと力説した中から、

「ウサギやネズミ、カエルがしゃべるのも、オオクニヌシが活躍する出雲神話の特徴」と、引用してあります。

稲羽の素兎、「内はほらほら」の鼠、は、すぐにわかるでしょうけど、カエル?と、疑われるとは思ったのですが、あえて訂正しませんでした。

正確には、ヒキガエルです。

スクナヒコナがオオクニヌシの前に現れて、だれもその出自を知らなかったとき、

「きっとクエビコ(かかし)が知っている」と、ヒキガエルが言ったのでした。

以上、「古事記」トリビアでした(笑)。


最終講義

高校の同窓会組織が主催する、「最終講義」の催しがありました。

大学の最終講義は耳にしますが、高校ではめずらしいはずです。

母校は、妙にそれが似合う高校ではあります。

私の恩師は、早稲田卒業後の新採用として、昭和39年に母校へ赴任され、それから25年間、同校で教鞭をとられたそうです。

私が通学した当時には、そのような先生方がたくさんおられたのでした。


講義のテキストは、「平家物語」でした。

巻の九、「坂落(さかおとし)」「忠度最期(ただのりさいご)」「敦盛最期(あつもりさいご)」「知章最期(ともあきらさいご)」の四章です。

世に名高い一ノ谷の合戦。源義経の、ひよどり越えの息づまるシーンが「坂落」です。

「つるべ落としに十四五丈」ある絶壁に行き当たり、こんな場所を馬で降りるなど、鬼神しかできないと思われる中、蛮勇と言っていい坂東武者たちが、(見栄で)命知らずに駆け下る様子が、映像を見るように描かれます。

総崩れになる平家軍。
船で退却しようと海岸に殺到する中、汀(みぎわ)でさまざまな人間模様があります。

歌人を望んだ忠度や、平家にとっては次世代をになう有望株だった、10代の優れた貴公子たちが、哀れに討ち死にするシーンが、個別の事情にわけいって、じっくりと描かれます。
先生がずっと研究しておられる箇所です。


……昔の授業のそのままに、全員で声をあわせて音読し、つかのま、もとの生徒の気分を味わいましたが。

10代20代の昔には、けっしてわからなかったということを、思い知りました。

場面が目に浮かぶ知識が増えたこともあるけれど、

容易に感情移入できるだけ、自分も人生を長く生きたのだという気がしました。


先生は、先生のそのまた恩師の言葉として、

「文学研究というのは、60になってから(が、ピーク)だ」と、講義の中でおっしゃいましたが、

古典に関しては、まったくそういうものだと思いました。


……講義終了後は、同期の人々で集まり、飲み会をして楽しかったです。

「アンダンテ」を見ていると、何人かに言ってもらえました。


my Classics2

ドリーミュージック

『my Classics2』

平原綾香

2010年6月9日発売    CD 3045円


エルガー「威風堂々」でJ-POPというチョイスの大胆さに、ちょっとやられてしまいました。

アレンジを間延びととるか、「ため」ととるか、聴く人次第のところはある、と思う。


「Sleepers,Wake!」(バッハ「目覚めよと呼ぶ声あり」)は、俊敏さが心地いいです。持ち味がよく出ていて、私は好きです。


なんといっても、「JOYFUL,JOYFUL」(ベートーベン「第九」歓喜の歌)が彼女の出発点であることを明示して、一本筋が通った感じがとてもいいですね。

しかし、これはやはり、並んだ他の曲が霞むほどに秀逸なナンバーだなー。


浜松へ行く

浜松に実家のあるNさんの、いち早くの情報入手にあやかって、
昨日、文化の日、
静岡文化芸術大学で開催された、
文化庁メディア芸術祭・浜松展のシンポジウムを聴きに行ってきました。

シンポジウムテーマは、
「音楽がアニメーションをどう変えるか」

出演者はなんとっ、

菅野 よう子  作曲家/編曲家/プロデューサー
神山 健治   『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』監督
渡辺 信一郎  『カウボーイビバップ』監督
司会:  佐藤大 脚本家

これが、ただのシンポジウムではないことは一目瞭然で、
抽選倍率も、ただごとではなかったもようですが、
がんばって、浜松まで出かけてよかったです。
すっごくおもしろかった……
飽きず退屈せずに、2時間半シンポジウムを聴いたのは、
生まれてはじめてかも。

いかにスゴイ内容だったかを、ネットに上げる人はたくさんいると思うので、
それだけ述べておくことにします。

快晴で、東海道新幹線の窓から見る富士山がみごとでしたが、
昨日は、浜松も寒かったです。
暖かい土地のイメージだったけれど、
冬のからっ風が体感温度を下げるのだそうです。

シンポジウムの後は、Nさん家におじゃまして、
古なじみのお店のうな重をいただきました。
土地っ子が自慢するだけある、
びっくりするほど香ばしいうなぎでした。これもスゴイ。

お宅には猫が4匹いました。
知人宅を訪問して、同居の犬や猫が寄ってきてくれて、
「この子はふつう、初めての客にはこんなに寄ってこない」
と、言われるのが、最近3軒たて続けなので、
どうしてなんだろうと思っています。
あまり、かまったり撫でたりしないからかな。

紀尾井ホールの授賞式

児童文学研究家・翻訳家の神宮輝夫先生が、
エクソンモービル児童文化賞を受賞され、
昨日、佐藤多佳子さんといっしょに、授賞式のお祝いに参加しました。

会場は紀尾井ホール。
ロビーには、受賞記念展として、
神宮先生が翻訳された本や、御著書、
大学の教鞭をとる中で、
教え子から育った作家や翻訳家の書籍が展示してあります。

佐藤多佳子さんの『一瞬の風になれ』も並んでいます。

私は教え子ではないけれど、(大学後輩にはなるかな…)
神宮先生が訳された、英米児童文学ファンタジーは、
私が10代のうちに影響を受けたものばかりです。
並べてながめるだけでも、じんときます。
今ある自分に導いてくれた、恩師と感じるかたです。


授賞式は、エクソンモービル音楽賞といっしょに行い、
音楽賞の記念公演があり、
チェロの趙静さん、お囃子の藤舎呂船さんが
中ホールで演奏を披露されました。
指揮者の大野和士さんは、トークを行いました。

こちらは余得で、なんとも贅沢な思いをしました。

音響がすばらしいと聞くけれど、まだ、
紀尾井ホールで演奏を聴いたことはなかったんです。

チェロの音色もきれいに響いたけれど、
クラシック音楽専門のホールだから、ふさわしいものではありました。
思いがけない気がしたのは、邦楽のお囃子です。

鼓も笛も太鼓も、美しく澄みのぼって、
はりつめる空気に、思わず息をひそめてしまいました。
ものすごくよかったです。
同じホールのステージにのせて聴いたからこそ、思い知ったような。
邦楽ってすごいものだと興奮しました。

滝の姿(2)

熊野旅行へは、都合3回行って、
2度、私も那智の大滝を拝んでいます。

最初に見たのは、ひとり旅で行ったときで、
「いちおう、熊野三山はまわらないと」くらいの気軽さで、
滝を見に出かけたものですが、
実際、私自身もあとあとまで、この滝の姿を心に残しました。

旅の最大の目的は、熊野三山ではなく、
「花の窟(いわや)」を見てくることだったので、
そして、ゴトビキ岩も見てきた後だったので、
なおさらだったのです。

何がなおさらなのか、非常に言いにくく、
誤解をうけやすいものになってしまうのだけど、
窟も、滝も、巨大な女性だということが、見ればわかるのでした。
(一方で、ゴトビキ岩は男性です。)
それらがあまりにも巨大に構えて、天空のもとにあり、
つき抜けたものに変わってしまうので、
古代人が拝む気持ちが、まっすぐ受け取れるのでした。

口から口へ話題にしたのでは、わい談のような地に落ちたものに変化してしまう、
とんでもない微妙さ精妙さがあります。
そのぶん、とことん神聖なものです。
これが、日本の奥底にあった古い信仰だと、初めてわかった気がしました。
伊勢ほどに、だれが見ても清らかに正しい、漂白された神ではないものがある。
そういうものだからこそ、先に、
浅い理解の人には明かさない、「密教」と習合していくのでしょう。

白洲正子がここをうまくとらえて、
密教や修験道のもっている奥義が、
エロティックなものにも通じ、
容易に崖から転落し得る、
細い道のバランス上にあることに言及しているところ、すごいなと思いました。

滝の姿

昭和三十九年の東京オリンピックに、
日本国民が熱狂しているさなか。
その画一性に背を向けるように、
西国三十三所巡礼に旅立った、白洲正子は、
やはりかっこいいなと、思います。

東京都民として、なおさらに。

これを書いている時点で、まだ2016年オリンピック開催地は、
決定していないのですが、
連日のTVニュースで、もううんざりしてくるというか。
あ、首都圏ニュースが入るからか。

西国三十三所巡礼は、
那智の大滝から始まるそうで。
熊野那智大社の隣の青岸渡寺が、第一番札所だそうです。
白洲正子の心に、まず感じ入ったのが、
那智の大滝――ご神体である飛瀧権現の姿でした。
あとあとまで、この滝を賛美しています。

だからなのかもしれない。
彼女が、直感にまかせて仏像の美を追究すると、
日本人の根っこにある山岳信仰、
明治に途絶させられた、
修験道のもつ神仏習合の世界にせまっていくのです。

昭和四十年代に、これが言えるって、すごい。
当時の国内の西洋崇拝ぶりは、
今よりずっと蔓延していたと思うのに。
十代後半をアメリカ留学で送ったひとが、
言うんですよね。

八王子城

このところ、高尾山に数回行っているけれど、
昨年、小学生以来はじめて登ったときは、
山頂までも行かず、薬王院にお参りしたら下山してしまって、
近くにある、八王子城址に登ったんです。

北条氏照の館跡を見るだけのつもりが、
勢いで八王子神社(もとの城の、中の丸に建っている)まで登ったら、
高尾山のように整備していない山道が、
えらくきつく感じられましたが、
途中のながめもすばらしく、まだ観光化されきっていないたたずまいがよく、
「穴場だねえ」と、同行者と言い合ったものです。

八王子城は、
太閤秀吉が小田原に侵攻して、北条氏を討ち破ったとき、
支城の一つとして、小田原城包囲の前に攻め落とされたものです。

この八王子城攻略に、豊臣の北陸支援勢として、
上杉景勝・直江兼続が加わっていたみたいですね。
大河ドラマ『天地人』は、チラ見しかしていない私ですが、
急に歴史に位置づけられた気分になって、おもしろく思いました。

しかも、八王子城が落ちたころ、
石田三成が、おなじく北条氏の支城、忍(おし)城を攻めていたらしい。
忍(おし)城といえば、『のぼうの城』(和田竜・著)ですよ。

八王子城は、城主不在の小勢を突かれて、一日で落城しましたが、
談合をゆるさない、徹底抗戦をしいられ、
死者2千人をこえる、血なまぐさい合戦だったらしい。
秀吉に、小田原の籠城勢へ示しの思惑があったようです。
数ある支城で、忍城だけが唯一最後までもちこたえたわけです。

『のぼうの城』を読んだとき、
何か、関東勢というものの匂いがするようで、親近感があったけれど、
こんなところにもあったのか、と思いました。

バレエ余談

「オマージュ・ア・ベジャール」にすなおな感銘をうけた余波で、
思わず、DVD「愛、それはダンス」を購入したんですけど。

いちばんの目的は、
とても印象に残った「ルーミー」の振り付けでした。

くるぶしまでのロングスカートをまとった男性の群舞。

ルーミーが、イスラム教一派の敬虔な旋回舞踊であり、
旋回して、衣の裾を傘のように広げる彼らの宗教上の恍惚を、
知識として知っていましたが、ベジャールは、
この旋回を、ほんの一部に使用しただけで、異なる独自の境地へさそうわけなのですよ。

でも、はっきり言って、
DVDの映像は、私が舞台で見た感動とは別ものでした。
あまりに伝わってこないことに、むしろ愕然として、
なぜなのかを考えましたが。ある意味、
カメラワークに強制されて目にすることの不自由さを、今はじめて理解したのかもしれません。

「愛、それはダンス」は特に、同時進行で目にするものが重要なので、
舞台を観にいった人でないと、集中力を減じる方向にしか進まない気がします。

おととい、NHK・BSで、マニュエル・ルグリの、
「エトワール最後の60日間」と、全盛期2002年の「ドン・キホーテ」を、
放映したのは、私にとってはフェイントでしたね。

ルグリの、44歳パリ・オペラ座エトワール引退のシーンは、これにも涙ものでしたが、
買って失敗だったかと思ったDVD「愛、それはダンス」の、
ラスト、クィーン「ショー・マスト・ゴー・オン」にのせてのカーテンコールで、
派手な身ぶりはせず、ただ、にこにこして立っているベジャールが、
出演したダンサーみんなの敬意を受けている場面に、
彼の死後初めて、いつまでも泣けてきてしかたありませんでした。

出かける用意があって、化粧をすませた後だというのに、
がまんしてみても泣いてしまった……

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